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YZR-M1の出力      yamaha      

 990cc4ストロークマシンによるMotoGPが2006年で終わり、ヤマハからMotoGPマシン・YZR-M1の開発の経緯等がウェブサイトに公開された(2006.12)が、ここでは、これまでヤマハからYZR-M1の出力について公開された資料をまとめ、検証してみる。

 出力は条件により変動する。例えば気温が20℃から25℃に上がれば、単純に考えて出力は(273+20)/(273+25)=0.983倍になるし、気圧、湿度も大きく影響する。気温等による補正式はあるが、補正式は補正式でしかない。さらにエンジンそのものの個体差を考慮しなければならない。2、3PS程度の差を云々しても仕方がないのである。
 ここではヤマハが公開したデータについて細かい数字の差を示すことになるが、あくまで公開データの検証という点でのみ意味がある。

 これまでヤマハから公開されたYZR-M1についての資料のうち、出力及び関連する仕様に関する記述は次のとおり(括弧内は私の注釈)。

A ヤマハウェブサイト(2006.12) ・2001年型と比べ2006年型は38kW(51.7PS)向上
・2006年型は2002年型と比べ約35PS向上
・(2006年シーズン中に)5PS・400rpm増加
・2001年から2006年への出力変遷図あり
B 自動車技術会2006春季学術講演会
 (2006.5)
・最高出力175kW以上(238PS以上)に相当
・2005年型はストローク/ボア比で約15%ショートストローク化
・2005年型はバルブ径拡大
C 自動車技術会シンポジウム(2006.3) ・2003年から2004年にかけて7kW(9.5PS)以上の出力向上
・2000年から2004年への出力変遷図あり
・2004年型はバルブ径拡大(吸気は3バルブ→2バルブなので当然だが、排気も径拡大)
・2004年中盤のレースからボア2mm拡大しショートストローク化
・2000年から2004年にかけて、2000rpm以上の高回転化を達成
D 自動車技術会Motoring22 「現在のモトGPレーサーは〜175kW(238PS)を超えるエンジン性能〜」の記述

 さて、Aの出力変遷図(右:報道陣に配布されたPowerPointファイルから作成)には、次の問題点がある。

・02〜06の差が25kW、500cc〜06の差が38kWとされているが、02〜06の縦軸の長さを基に500cc〜06の差を計算すると39.8kWになってしまう。プロットの位置、25kWの表示、38kWの表示のいずれか(複数の可能性あり)が正確ではない。なお、本文中では02〜06の差は約35PS(35PSは25.7kWに相当)とされている。
・各年の出力変化がどの程度が示されているが、各年のどの時期(シーズン開始時〜シーズン終了時)なのか不明である。
・クランクシャフトなのか変速機出力側のどちらで計測した値なのか示されていない。

 なお、海外のサイトでは、ヤマハの辻氏が「〜the power has gone up steadily. After the 22 litre fuel limit regulation was introduced  [for 2005] the improvement in power slowed down a little.」と語ったとされており、こちらでもそのまま訳されている。横軸が「年」ならそのとおりだが、横軸は回転数なのでこれは誤りである。むしろ、04年から05年への縦軸の伸びは他の年より大きい。

 仮に数字を丸めるとするなら38kWという10進法では中途半端な数字ではなく、せいぜい5単位にするだろう。ここでは、図のプロットの位置と38kWという数字は正しく、25kWが丸めた数字と仮定して、右図の出力向上幅の値を読み取った。
 

 Cで示された図と上のAの図を比較すると各年の出力の伸びに差があることが分った。そこで、Aの図とCの図から出力の向上幅を読み取り対比したのが左図である。また、上図の500ccを2001年と、Cの図の2001年の値を500ccとし、それぞれの値が同値と仮定し、出力の経年変化を対比させたのが右図である。Cで「2003年から2004年にかけて7kW以上の出力向上」とされているが、左図では6.9kWである。少々の読取誤差はご容赦頂きたい。

 両図から、AとCとでは元になるデータが異なることが分る。そして2002年と2004年でいずれもCの出力向上幅が多目である。また、Aで出力向上幅が少ないのは2004年で、Cで出力向上が少ないのは500cc時代を除けば2003年である。
 これまで公表された開発経緯で出力に関係する事項は右表のとおりである。(1)、(3)、(4)、(5)、(7)は出力面でプラス、(2)、(6)が出力面でマイナスの要因であり、(1)、(4)はシーズン中の変更である。

 このように見ると、AとCの図の違いは、

・Aの図はシーズン開始時のデータを基に作成されている
・Cの図はシーズン終了時のデータを基に作成されている
 
(1) 2002シーズン中に排気量を拡大、990ccフルスケールへ
(2) 2004年型から不等間隔点火
(3) 2004年型でバルブ径拡大
(4) 2004年シーズン中にショートストローク化
(5) 2005年型でショートストローク化、バルブ径拡大
(6) 2005年型でタンク容量24→22L
(7) 2006年型でショートストローク化

 ことによる、とすればある程度は説明ができる。しかし、Aの2005年と2006年の出力向上幅を加えても11.9kW(16.2PS)にしかならず、2005年シーズン終了時から2006年型への本来の出力向上幅を考慮すると、2004年シーズン開始時から2005年シーズン終了時への出力向上幅はせいぜい12PS程度である。某誌2006-4号の記事ではヤマハの技術者が2005年型の出力について「ムチャクチャ上がっています」と語ったとされているが、この程度の出力向上を「ムチャクチャ」と表現したりするだろうか?本頁の最初に「検証する」と書いたことに期待された方には申し訳ないが、ヤマハから公開されたデータの意味が私にはよく分らないのである。

 なお、B、Dで最高出力が175kW(238PS)以上と言っていることからすると、2006年シーズン終了時の出力は250PS程度なのだろう。

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